Lesson 002

Backing material for embroidery Part.02

atsumi

ミシン刺しゅうの仕上がりを
より良くするための接着芯。
実践編

July 20, 2020

ミシン刺しゅうに必要不可欠な接着芯。アイロンで生地に接着するもの以外にも、水溶性のシートタイプがあったり、2つの接着芯で生地を挟む使用方法など、布に合わせた種類と方法を選ぶことが刺しゅうの仕上がりをより良いものにします。brotherに在籍しているエデュケーターと呼ばれる講師に、ミシン刺しゅう用接着芯の使い方を教わりました。基礎編と実践編の前後編に分けてお届けします。

* 基礎編はこちらから


—— それでは実践していきましょう。「刺しゅう用接着芯」をアイロンで貼る際に、気をつけるべきことを教えてください。

アイロンの温度を初めは「中」にしておき、接着しづらいようであれば「高」に変え、そこから少し温度を下げて再度接着してみましょう。アイロンを当てる時間を少し長くしたりしてもいいかもしれません。高温に弱い生地もあるので、心配なときは生地の不要な部分にアイロンを試しに当ててみてもよいでしょう。薄いニット素材やTシャツなどに強く貼ってしまうと生地に糊が残ってしまいますし、剥がすときに生地が伸びて傷んでしまいます。そのような生地はさらっと接着できれば十分なので中温くらいがいいと思います。糊残りが気になる場合は、共布の生地を置いてもう一度アイロンを当てると糊が移るのでやってみてください。

キャラクター等の刺しゅうに多いのですが、同じ糸の色を一面に縫うなど縫う面積が大きい図案の場合にはしっかりめに接着してください。高速で縫うことにより、生地が少しずつ縮んできて最後の輪郭線がずれる等の失敗の原因になるからです。

—— 図案によって注意が必要なものがあるということですね。

まずは生地の種類や素材により使い分けてください。次に、選ぶ図案データですね。さらに刺しゅうを施したものを何に仕上げるかもポイントの一つです。例えば、大きなバッグなどに使用する厚みのある生地であれば「刺しゅう用接着芯」でいいと思うのですが、薄い生地の軽いバッグだとゴワっとしてしまうので、そのような場合は「刺しゅう用水溶性シート(不織布タイプ)」を使います。もっとデリケートな素材の場合は、「刺しゅう用水溶性シートL」がいいですね。この判断が難しいので、生地の端で一度試すことをおすすめします。

—— アイロン接着を終えたら枠張りです。厚みのあるトレーナー生地は刺しゅう枠を張るのが難しいですよね。

刺しゅうで一番重要なのが、枠張りです。余談ですが、専門の職人さんの間では “枠張り3年”と言われているほどだそうです。伸びる生地の際は枠を張るときに一緒に伸ばさないように気をつけましょう。伸ばして枠を張ってしまった場合、枠を外したときに刺しゅうが入っていない部分の生地が元に戻り、刺しゅうのまわりにシワができてしまいます。

枠を張るときは一気に押さずに、まず上の二隅をきれいに合わせてから下のもう二隅の外側の枠を持ち上げるような感じで入れるとはめ易いです。手刺しゅうのときも同じような動作だと思います。枠をセットした後はネジをぎゅっと締めてください。手だけではなく、ドライバー(写真上から2枚目)があると便利です。これは針板(ボビンを入れる銀プレートの箇所)のネジを開けるときにも使えるマルチドライバーです。

最終的に平らなところで外枠と内枠に段差ができていないかを確認しましょう。後ろから軽く叩いて、生地に張りやたるみがないかをチェックします。たるんでいたら上下左右から生地を伸ばさないように気をつけながら引っ張ります。この状態でミシンにセットします。

—— そして糸かけをして、刺しゅう開始ですね。

上糸はミシン刺しゅう糸を使用します。光沢のあるもの、マットなものがあります。下糸は、専用の下糸を使用しましょう。純正の刺しゅう用下糸には白と黒(写真上から3枚目)があるので、生地の色や上糸の色に合わせて選んでください。ラメ糸を使う際は、薄い生地や硬すぎる生地には注意が必要です。ラメ糸は糸をコーティングしてあるため、少し厚みのある仕上がりになっており、刺しゅうデータや生地の種類によっては切れやすいものもあります。

スタート/ストップボタンのランプが赤い状態、必ず押えレバーを上げた状態で糸かけをしましょう(写真上から5枚目)。ミシンは上糸と下糸のバランスがとても大事なんです。それを糸調子といいます。糸かけの過程で、ミシンの中の見えない部分に糸調子皿という薄い2枚のシンバル状のお皿があり、糸の通り道を開いたり閉じたりしています。この動きは押えレバーの上げ下げによって行われています。なので、押えレバーを上げた状態、すなわち糸の通り道が開いた状態で上糸を通さなければ正しい糸調子に合わせることができません。

—— 赤いナイロン製のバッグと黒い別珍素材に使用した接着芯について教えてください。

通常、接着芯は生地の裏に貼るものですが生地によってはこんな使い分けをします。赤いナイロン製の生地は「刺しゅう用接着芯」を貼らずに下に敷き、上に「刺しゅう用水溶性シートL」を挟みました。黒の別珍素材は、「刺しゅう用接着芯」をアイロンで弱めに接着し、枠の跡がつきやすそうな生地なので上に「刺しゅう用水溶性シートL」を挟みました。どちらも生地を接着芯でサンドウィッチする使い方ですね。

 

text:高山かおり photo:中矢昌行


Information

テキストの中で紹介した3種類の接着芯やドライバー、刺しゅう枠、糸はこちらからご購入できます。生地と図案に合わせてぜひ使ってみてくださいね。

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