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atsumi with brother

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糸、生地、数字の組み合わせ。
無限に広がるミシン刺しゅうの楽しみ方。

December 20, 2022

刺しゅうデータをダウンロードできるサービス「ハートステッチズ」に、刺しゅう作家atsumiさんがデザインした新しい模様が加わりました。様々な図形を組み合わせた数字の図案は、一見シンプルに見えますが微調整に時間がかかったのだとか。抜きを活かしたデザインにした理由や今回の刺しゅうの使い道について、atsumiさんにお話を伺いました。


―― parieに内蔵されている刺しゅう模様から始まり、年に1回新しいデータを作成していますが、5回目となる今回はなぜ数字の図案にしたのでしょうか。

ハートステッチズでどういう柄が人気なのかブラザーさんに聞き、3cmぐらいの小ぶりなものだと使いやすくていいよねという話になりました。元々文字のデザインが欲しいと言われることが多かったのですが、さすがにアルファベット全部だとけっこうな数になってしまうし、パッケージとして難しいなと思っていて。数字なら0~9の10通りでちょうどいい量ということもあり、今回は数字になりました。

小さいのでできることをあまり詰め込めないという苦労もありましたが、 “サイズ”という制約があったことで、このデザインが生まれたという面白さもあります。サイズが大きいと色々な絵を描けるけれど3cm×3cmだと限度があるし、一方で要素を足しすぎると数字の存在感が薄れてしまうというのもあるので、その兼ね合いを踏まえながらいかに可愛くするかを考えました。

―― 丸や四角だけでなく、数字によって図形を変えているんですね。

全て丸とかだとつまらないし、同じ形だと数字同士を合わせて使おうとあまり思わなそうだなと。数字は桁もあるし、アレンジが豊富にある方がいいなと考えそれぞれ違うものにしました。直線だけで書けるものや丸みがあるものなど数字自体の形がまずあるので、数字によってフォントも変えています。シンプルだったり強弱があったりとフォントの種類はいくつかあるけれど、一緒に並べても違和感がないように心がけましたし、フォントと図形の組み合わせにはすごい悩みました。全体のバランスを見て、何度も細かい調整をしましたね。

―― 数字ではなく周りを刺しゅうするデザインにしたのは、何か理由があるのでしょうか。

数字自体を刺しゅうするデザインは既にあったので、今回はあえて数字を抜きにしようというのは割と早い段階で決めていました。抜きになっていると生地が見える楽しさもありますし、生地の色によって刺しゅう糸の色も変えたりと、アレンジの余地があるのが面白いというのが理由のひとつです。決まり切ったデザインがいいなら最初からそれを選べばいいですし、私が図案を考えるときはいつも「刺しゅうする人が自分で工夫する楽しさを余白として残す」ということを大切にしているというのも大きいです。

地の色が影響することによって色合わせを考えなければいけないとハードルがあがるかもしれないですが、こういうのは訓練だと思うので、失敗してもめげずに挑戦していってほしいです。色が見えづらいなと思ったら何でだろうと原因を考えていくことで、刺しゅうだけでなく洋服の組み合わせとかを考えるときにも役に立つと思います。細かい小花柄の生地などに刺す場合は、空いている面積が広い方が柄が際立つのでそういう数字を選んだり、反対に刺しゅうをそこまで目立たせたくないときは馴染みやすい色合いの刺しゅう糸にしたりと、どんどんアイデアを出して試していってください。

―― 色数は2色と少なめなんですね。

オリジナルの図案(写真上から1枚目)は、白い生地に刺したときにバランスよくなるように色味を決めました。あまり色数が多いと色を決めるのに悩むという声をよく聞くので、ひとつの図案の中で使う色はなるべく少なくしました。刺しゅう自体は3分ぐらいで終わりますし、糸替えも1回だけで気軽にできるというのも魅力なので、アレンジの余地もありながら難しくないという方向性で考えています。

色数を減らした分刺しゅうの質感を表現できたらと思い、ステッチは少し凝ったデザインになっています。様々なステッチが簡単にできるというのが刺しゅうミシンならではなので、そこにも注目してみてください。

―― 生地に直接刺しゅうするだけでなく、ワッペンとして使うこともできるんですね。

上位のモデルのミシンならできるけれど、普通の家庭用の刺しゅうミシンだと靴下のような筒状のものには刺しゅうができないので、ワッペンみたいに使えたら使い方の幅も広がるかなと考えました。フチのギリギリで切り取って貼り付けてもいいですし、フェルトで作った見本(写真上から2枚目)のように、フチをわざと残すと雰囲気を少し変えることもできます。ワッペンにすればポンポンポンと付けていくだけでいいので、洋裁が得意じゃない人でも楽に刺しゅうを取り入れることができますよ。

今回はサンプルもそのあたりを踏まえて作っていて、ハンカチとシャツ(写真上から3枚目)は地の柄を活かしたもので、スリッパ(写真上から4枚目)と靴下(写真上から5枚目)はワッペンの活用方法を見せたくて選びました。実は“家族”という裏テーマがあって、お父さんの靴下、お母さんのハンカチ、子供のシャツ、お客さんのスリッパというように考えています。刺しゅうってどうしても女性とか子供のためというイメージが強いのですが、数字の図案が浮かんできたときからどんな人でも取り入れやすいのが特長だと思っていたので、そこから家族というテーマになりました。

―― かわいくなりすぎないので、誰でも日常使いしやすいデザインですもんね。どんな風に使ってほしいなどはありますか。

アルファベットだと自分のイニシャルを選ぶことがほとんどですが、数字だと好きな数字や背番号とか多様な使い方があると思うんです。昔のポケベルみたいにサンキューを39にしたり(笑)。この図案を使ってすごろくのようなゲームを作ったり、何足も同じ靴下を持っている人は目印に刺しゅうを入れたり、使い方は無限大なので色々な用途で使ってほしいですね。

あとは、小さい子が洋服を着るときのトレーニングとして、袖や首元などに番号を入れてもいいと思います。好きな色で刺しゅうしてあげたらそれだけで喜びそうだし、一緒に数字を覚えることもできます。私自身も幼い頃に「あなた専用のものだよ」と言われたのがすごい嬉しかった思い出があるのですが、子どもは「自分のもの」というマークが入っているだけで満足だし後々の記憶にも残ると思うので、そういった活用の仕方もあるかもしれませんね。

text:藤枝梢 photo:中矢昌行


Designed by atsumi

atsumiさんがデザインした新たな刺しゅう模様のダウンロードは、「ハートステッチズ」からダウンロード可能です。
※会員登録後、有料での販売となります。

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